性別のない世界のお話
もしも本当に神様がいて、アダムとイヴが作られたなら。
どうして男女としたのだろう。自分に模したのなら、どうして1組の男女になったのだろう。
1人の人間に2つの性器があればいいのに。
人に性別なんて概念がなければ、私はあの子に告白できるのに。
あの子の長い黒髪すくいあげて、静かに静かにキスをするのに。
私の方へあの子が振り向く、そんな瞬間があるというのに。
性別のせいにして一歩も動かない私が、この世界からいなくなるというのに。
男女の差もなくなって、セクハラなんて、わいせつ行為なんて、痴漢なんて、生理のつらさなんて。
男女の認識の差なんて、何でも奢らせようとする女子なんて、ヤリチンなんて、ビッチなんて。
世の中の男女の問題だって、きっと少しは減るのに。
そうなったら少し、ほんの少しだけ、
人類は完璧に近づくのに。
そうして正しくあの子を愛せるのに。
綺麗にあの子を愛せるのに。
そんなことを思いながら、あの子のことを想いながら、私は1人の女のまま、女のままで生きていく。